飲泉カップ

飲泉文化は旧東欧圏のチェコを中心とする温泉地で最も成熟しており、今でも「浸かる」温泉よりも「飲む」温泉が主流となっています。これは、ヨーロッパ諸国の温泉地は医療と密接に結びついた療養地となっていることが多く、飲泉が身体に良い作用があることが早くから明らかになっていた為だと言われています。

ドイツ ヨーロッパにおける飲泉治療の中心的存在

ドイツ国境にほど近いチェコのカルロビバリとマリエンバートは、ヨーロッパにおける飲泉治療の中心的存在です。そこでは、何百種類もの型と絵柄のバリエーションがある飲泉専用カップを使い、整備された飲泉場で、健康保険制度下の温泉医に処方された量を決められた時間に散歩をしながら、もしくは座って10~20分かけて少しずつ飲むというスタイルの飲泉文化が今も健在です。

ゆっくり少しずつ飲むというスタイル

当初は温泉をグラスで飲んでいましたが、16世紀頃に飲泉に適した飲泉カップが生み出されました。飲泉カップは、温泉地によりそれぞれ特徴が違います。陶磁器製、ガラス製、金属製などがあり、最近ではプラスティック製のものもあります。チェコでは陶磁器、特に1,300℃の高温で焼かれ、薄くて軽量かつ丈夫な磁気性が主流となっています。なぜなら、カルロビバリのある西ボヘミア地方は硬質磁気の原料となるカオリンの主要な生産地であり、ボヘミア磁気の産地でもあるからです。飲泉カップは歩きながらでも飲みやすいように、形状は独特な形をしています。容器の底からストロー状の取っ手が出て、容器全体が左右から潰されて扁平した形をしています。これは持ち歩いても溢れにくいうえ、最高73℃の熱い源泉をストロー部分で程よく冷やすことができるという機能に特化した形状なのです。

チェコの飲泉カップ

▲ チェコの飲泉カップ

飲泉カップの仕組み

▲ 飲泉カップの仕組み

飲泉をしている人々の中には、持ち歩かなくていいようにネック・ストラップで首から飲泉カップをぶら下げている人もいます。この複雑な形状の磁気カップの製法は、日本では排泥鋳込と呼ばれ、金型を鋳型に作った石膏型にミルク状にした生地を流し込み、石膏が水分を吸収して厚みを増す時、余計な生地を排出する技法でつくられています。日本の温泉地でも飲泉カップは各地で作成されています。日本では柄杓などで飲泉するケースも多く見受けられます。

※日本では、各都道府県の判断で温泉の飲用許可を出すことになっています。この飲用許可を得てはじめて飲泉が可能になります。環境省が飲泉についての利用基準を定め、飲泉についての注意事項を発表していますので、その注意事項によって人での飲泉の方法が定められています。